月も言うだろうけど

どこにはじまりがあるのか

もう見つからないほど 遠く

細いだろうその先へ

羽根をもがれながら 僕は

金属に乗って赤黒いチューブの中を

突き進んでた

いつか見た事故現場で寝転がる人が

僕の顔で意識を無くしてて

僕は少し高いビルの屋上から飛び降りてしまった

どうせ終わってしまった と言って

 

目が覚めると 部屋は

もう薄暗く 日が暮れている

何かを失いながら 人は大人になると言うから

僕は何を失うんだろうと思う

何にもないように感じながら 日々なぜだか思う

僕は何のはじまりに向かってたんだろう

朝も昼も食事を抜かして

野菜ジュースを 一気に飲み乾す

 

来たばかりの新聞を拾って来て

星を見ると 冬を感じる

それは寒さや淋しさでなく

過去の記憶のように思える

遠くの街の気配と たくさんの切ない思い出を

匂いのように嗅げる時間な気がする

息はまだ白くは吐けない

ただ口の中が乾いている 喉の奥まで…

僕は新聞に目を通してから眠ったんだった

夜明け前 それはただの昨夜だったと思うけれど

 

あったかいものが食べたくなって

缶詰のコーンスープを買って来た

コンロにかけて 牛乳とかき混ぜる

延長で遅れたバラエティー番組の隙間に

いつものニュース番組を覗く

今夜は早く寝ようかなと思う

さっき掛けた電話で聴いた 君のいう僕を僕は

少しだけほんとうだと思う

こうして鳴り止まないものがひとつでもあれば

何かひとつくらい忘れてしまえるような

楽観的な休日が過ぎる 悲観的にはならずに終われる

 

眠り過ぎる僕の 君を見送らず眠る日曜日が終わり

シーツの皺を伸ばし 明かりを消して潜り込む

「君が無事に帰り着いたかどうか 僕はいつも気にしているから ほんとだよ」

無駄なものがまだまだあるから 時々ひどくむなしくなるけど

 

「静まりかえったあの月に似て 風がぼうぼう吹いているのよ 嘘ばっかり」

僕も少しだけ そうだと思う 月曜日の月を見てる

でこぼこの僕の頬へ またキスしてください 僕は思う

君がいられる 土曜日の夜にまた 僕は思う

月に誓うなんていうのは 生きるくらい意味がないと

月も言うだろう 月も言うだろうけど

 

君を想ってるのは どこだろう

それが胸を締めつけさせてるのか

手を熱くさせてるのか

言葉に詰まらせるのか

月に問うなんていうのは 生きるくらい意味がないと

月も言うだろう 月も言うだろうけど

 

どこにはじまりがあるのか

もう見つからないほど 遠く

細いだろうその先へ

羽根をもがれながら 僕は

金属に乗って赤黒いチューブの中を

突き進んでた

 

飛び降りるなら

月夜がいい 月も言うだろう 月も言うだろうけど