深海の花

…えっと、これと、これ…はい…いっしょで……

…そこ…ん?…ああ…はいっ…ちょっとさむいな…え?…ああ、まぁね…うん…どう?……ひとくち…ん?…え?…そう…なぁ……

 

君の白い歯を見る度

髪の毛の色が変わる度

僕のものにはならないと気づく

君は言うけど、

テレビの見過ぎじゃない?って

 

橋のたもとのスターバックスで

いつか話した 昼過ぎの青い光の口から

車道に巻き上がる埃と共に僕らも

師走の雲から ほぼ金色に洩れていた

 

会話さえはしょってた このところはね

紙飛行機がうまく遠くまで飛ぶ 遅刻のない休日なんてあってさ

カーテンを閉じた昼過ぎの薄暗闇で

新しい感触に気づいたりするんだ

慣れる速度が増してしまって

すべてが退屈になってしまいそうだよ

けど、手触りや息や、匂いや痛みは

歩いてける距離に 標で立ってる

そばにいないのに 思い出せなくて

 

―深海の花

見られることがなくても

生きてる意味はある?

―深海の花

太陽の光に憧れる術もなく

真っ白な花を咲かすんだけど

―深海の花

誰に見られることもなく

でも咲かすんだけど

―深海の…

生きてる意味はある?

 

僕のいつか言った長さに関わらない髪型を 君が

ときどきしてくれたら耳の辺りを 一日中もじっと見ながら

ぼんやりと答えを出そうとして来てる

君と出会う度

今、気持ちいい?って

不安な笑顔を向け合う度

僕の胸の細かい血管は狭く苦しく赤くなくなる

青くなるけど

泡が球体になり損なったまんま昇っていく無数を夢想せず

口を大きく開けたまま 僕は目では暗闇さえ 沈黙さえ

滲ませちゃうんだ

 

君の白い歯を見る度

髪の毛の色が変わる度

僕のものにはならないと気づく

こんなに大切なもの…

僕はただ包もうとして

広げる度 その腕の短さにくじけるんだ

 

テレビの見過ぎなんじゃない

ここにしか居場所はないけど

歪んだ椅子にも座れる強さだけは

ここにだけある そう信じます

 

胸の奥深くに

熱いコーヒーが熱くなくなるまで熱く

なんでここに君がいる

その不思議に 誓えます

 

……うん…うん、じゃ…え?あ、うん…じゃ、またあそこ…うん…ひるから…うん、あ…いいや…わかってるっ、うん…じゃ…じゃあ…ばいばいぃ…あした、うん…あした…ツッ……ツッ