ひとり

ひとりでいることを

不自然でなくしてしまって

寂しくないかい、なんて

ひとり自分に聞いてみる

 

何度も同じ道を回って

何度も同じ行き止まりに突き当たって

僕は空を見上げるようになったんだ

何度も同じ道を一緒に回って

何度も同じ行き止まりに突き当たって

それでも隣りにいた君を

泣かなかった君を

そばから離して

 

ちらちらと花が飛ぼうとしてる

そのまえに

僕は泣きたくなってしまったと

君に言った丘があった

そのまえにも

君が手招きで呼んだベンチがあった

まだそのまえに

空缶にふざけて差した

横を向いたスミレの花達がいて

そのまたまえに

森林公園から続く丘への遊歩道を見つけたんだった

 

遊歩道の入り口で

ジュース買って来てあげると

走ってった後ろ姿

 

枯らさないからと摘んだ

スミレの花に鼻をつけて目を閉じた仕種

そのあとの満足げな笑顔

 

ごみ箱がないからって

冗談で言った通りにスミレを差した空缶持って

歩いた横顔

 

ベンチの後ろの池で

眠るように進む水鳥を見て

こころ和ませていた頃…

 

静けさがすぎて

涙を止められなかった

曇り空の下の街

 

突然吹いた強い風に

そう、空缶が転げ落ちて

ちらちらと花が飛ぼうとしてた

 

君と背中合わせで

日が暮れてからもしばらく

座り続けてた沈黙のぬくもり

を忘れずにいる滑らかなこころ

が微笑んでるように温かい

 

ひとりでいることを

不自然でなくしてしまって

寂しくないかい、なんて

ひとり自分に聞いてみる

 

寂しいよ、すごく

はっきりと声になるほど

こころは君を粉々にして

想い出のなかに漂う

あの丘の上から蒔いてしまったのかな

スミレの花を追いかけるように

 

恋がこころ弾むばかりでないから

変わりない日常まで輝いて見えてたのかもしれない

 

ひとりになって

脇道を見つけて

いつしかそれが

僕のほんとの道になってた

 

僕は今日君に似てない人に恋した

馬鹿らしいけどほんとに真っ直ぐ目があったんだ

それからやたら

ひとりが寂しくなっているんだ

 

ひとりでいることは

不自然じゃなく寂しくて

恋するようにできてるみたいだ

恋してなくても温かいけど

恋してみないと気がつかない

そういうことに

今夜気づいたんだよ

 

さようなら

さようなら

君を忘れて

恋をして

ほんとに僕は

ひとりになります