ミルクティーの夕映え

君と過ごす時間はきっと

いつまでも日常にはならずに

過ぎてった気がするよ

 

生クリームが溶けてしまう前の

雲の甘い

ミルクティーの夕映えの中

咲きはじめた菜の花の中に埋もれ

手紙のような鳥達を見てる

 

別れの言葉というのを

どこから引き出せたんだろう

いともたやすく浮かんだ

さようならはさようならでしかなくて

君を泣かすだろうと想いもついたのに

 

目の前でばら撒かれてしまった

小さな女の子の赤いポッケに詰めてた

キャラメルみたいに

僕はただ踏みつけないようにだけ気をつけて

すれ違って 行くよ

君の右肩と

触れないように

 

抱きしめなければって

気持ちを噛んで

 

 

出逢いが尊くて

別れが哀しいなんて

そんなもんじゃないんだね

本当に赤い糸のような

“君と”だった

 

今夜

靴音で、素振りで、瞳で、

頬で、手と手で、唇で、肌で、

見える空気の振動で、

なんてもんじゃなく

見えないなにかの感触で、

呼び交わせた時刻を

弱い光で眩しい時間を

僕は越えるだろう

 

君がなにしてるのか

考えないように

考えないように

考えながら

 

 

二人だったのに

恋は

ひとつなんだね

けれど

なにか

僕らはどっちも

それに手を触れていなかった

そんな気がする

 

冷めないうちに

温かいミルクティーを

飲み乾すようには

これからも恋がないように

 

満天の星空の下でさえ

さえない朝を待ってはみても

 

 

生クリームが溶けてしまった後の

雲のいない

ミルクティーの夕映えの中

揺れはじめた菜の花を見上げ

手紙のような鳥達を見失ってく

 

別れの言葉というのを

どこへとしまってしまえばいいんだろう

いともたやすく消えない

さようならはさようならでしかなくて

でも

今はただ

君を呼べるメロディーを

消してしまおう

 

星を見つけ出した頃

手のひらの青い明かりを閉じたら

もう君を想う温度は落ちて行く

涙も見えないと思うと

滲んで夜空がきらめき出して

君への想いの

最後の一粒が

零れた気がした

 

空へ波紋が

広がる気がした

 

 

初めて入った喫茶店で

ほんとのミルクティー覗いたら

夕映えなんかより

ずっとずっと

優しい色が揺れてる

 

苦し紛れに君が言った

友達になろうが

やけに切ない言葉に思える

まだ大切そうに

君が返した指輪がひどく

蜜色に見える

 

遠く離れても

なんて言えなかった

遠く離れたら

そう思ったんだ強く

 

ありふれた別れがこんなに

深いものだと分かったんだね

一人で生きていくよりも

一人で生きてるんじゃないと気づき

大人になって行くように

 

また一度や二度は思い出すだろう

ミルクティーの夕映えに

 

またひとつやふたつは失くせないだろう

見つめながらの微笑みに

 

今日に似た夕日に会って

ただ切ないという

気持ちになっても

それは君との時間のせいだと

ほんとのミルクティー色で

思い出せたら

僕は今度こそと

また似てない恋の中を覗き込んで

落ちてきたい

 

それが別れと

会えないと

いうもんなんだと

ずっと

恋するたびに

言い聞かせても

ずっとずっと

生きてる間

言い聞かせても

 

 

小学校のグランドを横切る

咲いたばかりの花の

散ったばかりの花びらをひらう

二人を刻んだ指輪と共に

捧げるように埋めて帰ろう

少しだけ深く

気持ちだけ深く

これで終わりとは まだ

涙もろいし思えないけど

やがてや

いつかは

思えるために

思えるように

 

逆上がりして

逆さまのまま

空を見てたら

なんだかやっと

そんな気がして

落ちたポケットの中身を

しゃがんでひらった