神様のついた嘘だった

太陽がお昼寝している間に

地球は青くなくなって

僕たち人々のざわめいた後

とっぷりと静かになった

 

人々が生まれたのは

神様のついた嘘だった

夕暮れ時に太陽は目を覚まし

いつもと変わらぬ地球を見るだろう

遠く小さく青い地球だ

 

やがてみんな死ぬんですとか

いつかすべて終わるんですとか

すごく小さな世界に僕ら

青白いビームを真っ直ぐ放ち

黒いスクリーンに投影された

あの太陽も

そしていずれは燃え尽きるんだと

言い切る笑顔だ

 

僕にはどうにもできないんだな

誰にもどうにもできないんだな

共通体験のない僕たちは

やっとちょっと繋がりを感じて

嗚呼 神様。と呟いて

なんか満ちたりるのかもしれないよ

 

でも今だって

その気になれば

 

あの日へ

白いハトが羽ばたくだろう

ブラックシルクハットから

千羽はかたい

 

あの日を

色とりどりの風船は埋めるだろう

ぱちんとはじけないしゃぼんだまだよ

僕らのため息がつまってるから軽いんだ

そして七色だ

 

神様のついた嘘だった

何度もこころん中で呟いてたら

言ってしまいたくなった

この境遇や

そっから生まれた空白を

 

お昼寝している太陽だよと

z z z

と吹き出しにした

 

空白のすみっこで

まるくなってる黒いまんまるこそ

僕らの住んでる星なんだ

 

水を青く描くのは

海の記憶かな

空の記憶かな

ねぇ、せんせい

ぼくはどっからきたんかなぁ

 

泣き笑いながら空白を青く塗ってた僕を

抱きしめてくれたあのせんせいを憶えてるなぁ

胸の柔らかいを憶えているなぁ

 

赤く眠ってる太陽と

黒く死んでいる地球の間に

僕はせんせいとぼくを並べて描いた

へたくそな笑顔だけれど

精一杯のラインだったんだ

 

でもそうだね今だって

あの頃のせんせいを不透明な愛にして

“ あなたがいる地球 ”

には

限りない希望を抱いてるな

 

神様のついた嘘だった

なら嘘も方便

 

すべてから切り離されたら

僕は生きてらんない

そうだそれは誰もがそうだ

やっと共通点を見つけたのかなぁ

嗚呼 神様。

あんたもいてもいいと思うよ

あの雲の陰や このドアの向こう

染みる水や 深海の洞窟

このあやふやなあちらこちらの

少し硬いところに腰掛けていて

そしてなんなら

笑顔を一度見せておくれよ

この僕も

今なら笑顔を返せるんだよ

今なら笑顔を返せるんだよ

ほんとにほんと

今なら笑顔を返せるんだよ

 

耳元で囁く息がする

ありふれている風景を

僕はずっとずっと

空想世界で見てたんだ

 

ねぇ、せんせい

大人になれば分かるって

あなたが言っていたことを

少しずつ知って来た今ね

僕は、せんせい

こころの芯を見つけたんだよ

そう、火を灯す

一筋の白いラインを

そして光をくれるのは

生まれてまもなく手に入れた

見えないくらいに真っ白な

現実にあるすべてのものの

柔らかな部分

 

今こそは

この傍にいる人の胸の膨らみ

頬の果てにある紅色

僕は目をつむらないまま

神様あなたを吸い込んでしまう

 

空白こそ

初めから持ってたのかもしれない

鳥の鳴く

空にはその後に青が来るんだものと

君は言うから

 

そうだね僕は

君を抱きしめたそばからもう二度と

帰らなくてもいい

とさえ思える海が打ち寄せるもの

あの白い泡沫を見るもの

 

あの空白を

あの空白を

この空で

この海で

 

埋めるすべを持たない僕らは

二人そこに浮かんで進もう

切なさが痛いのも

愛しいが虚しいのも

そしてこれから

生きるのが険しいのも

死ぬことが終わりでも

一緒に一緒に

抱えてしまおう

 

神様のついた嘘だった

たとえたかがそれが

たったのふたつほど

重なっただけとしても

一枚の葉のように

木のあることを

信じて行こう

 

 

太陽がお昼寝している間に

地球は青くなくなって

僕たち人々のざわめいた後

とっぷりと静かになった

 

今一度キスをして

あの空白を持ち出して

またへたくそな笑顔をしよう

白いラインを手繰り寄せ

赤い火を灯そう

最後の夕日に

僕らはなろう

太陽が眠ってしまった

今こそと

燃えてしまって

最後の夕日と

なってしまおう

 

今一度キスをして

神様のついた嘘だった

この空白の

只中で

 

この空白の

真っ只中で