雲のいない空を見るたび

夕暮れの気配を感じて

のぼりかけた坂の曲がり角から

自転車で駆け下りて行く

すれちがう子供達を見送るように

ふと街を振り返った

 

雲のいない空を見るたび

あの日のぼやけた夕日を思い出す

行きたい場所を避けながら

この坂をのぼりきってしまったって

何が待っているんだろうととぼとぼと

それでものぼり続けてた坂

この坂をのぼりきってしまって何かあったって

なんにもならないと思いながら

立ち止まれなかったあの曲がり角まで

 

街には灯り始めた窓が散らばって落ちてて

空にはもう赤くなった夕日が手も振らず待ってて

幾層にも切ない青や黄色やオレンジ色が並んでて

 

影になった木も電柱も山もビルも風も人も

ちっともなにも言わなくて

流れてる車のライトと立ち止まってる街の外灯が

だんだんだんだん見えてきて

小さくなっていく夕日が燃え尽きる強がりみたいに

ぼやけて滲んで消えてしまって

 

居場所を探してた

寝転んでても平気な高い丘に

できることなら

そこらじゅうぜんぶ自分のものになればなんて

いつもひとりぽっちで

 

雲のいない空を見るたび

あの日のぼやけた夕日を思い出す

進むことに意味があるから

今はくだり坂を胸張ってくだれるんだろう

 

今度坂の途中で夕日を見たら

もっと真っ赤に見えるだろうか

そんなことばかり今は思う

雲のいない空を見るたび

こんなどこにでもある空を見るたび

気づかなかった青さや広さやそのまだ向こうに

ちっぽけに見えがちな自分のその中にある

ありったけの持ってる力に気づきうなずく

ここがすべての始まりだって

ここからすべてを始めたいって

 

あっけなく形を変えてもただそれだけの

雲のこれから生まれるような

雲のいない空を見るたび

そんなことばかりを今は思える