ただ暑いだけの夏のように

目のない人形に見つめられてる気持ち

口のあるぼくが話さないのは

きみになにかを想わせるかい

 

手のない怪獣に捕まりそうな気持ち

足のあるぼくが会いに来ないのは

きみになにかを抱かせるかい

 

小さな鈴の音が聴こえる

夏の昼下がり

言葉にしてしまうと陳腐な

けれど生あたたかい微風が

ぼくには きみを連れてくる

 

遠くに蝉の声が聴こえる

夏の明け方も

言葉にしてしまうとかなかな

けれど額に張りついた髪の毛

ぼくには きみを連れてくる

 

目のない人形に見つめられてる気持ち

口のあるぼくが話さないのは

きみになにかを想わせるかい

 

手のない怪獣に捕まりそうな気持ち

足のあるぼくが会いに来ないのは

きみになにかを抱かせるかい

 

きみを想うと 夏が

夏になる気が するよ

この夏も

 

きみを想うと ぼくが

ぼくになる気に なるよ

いつだって

 

この夏も

この夏が

ぼくには きみを連れてくる

 

そのきみが

そのぼくが

夏には 夏を連れてくる

 

風に吹かれたアイスキャンディー

ソーダ水の雫

笑顔が逆光で太陽写真

白い歯が彗星みたいだった

進行形の想い出の棘は痛いけど

そのきみが

そのぼくが

夏には 夏を連れてくる

 

手をつなぎ歩く商店街も

明るくていいけど

一人で見上げる並木の葉陰も

案外まばゆくきれい きれい

あの絵葉書は もう届いたかな

 

休みが合わない 夏休み

まっかな太陽よりも

まっさおな空よりも

きみを想うよ

まっくらな木陰より

まっしろなうろこ曇より

きみを想うよ

 

ただ暑いだけの

夏のように