ビニールプール

どこまでも続くものが

目のまえに あらわれて

手にふれて

その重みが こころの泉を

溢れさせて

零れちゃって

瑞々しくて

ぴちゃぴちゃと

それで 遊ぶ

ビニールプール ぼくときみ

子供になって そこに

いた

 

詩も 音楽も 絵も お話も

なにか こころを通って 人が作ったのなら

こころを通った なにかが まんま

共に こころに触れてくれればいいんだ

共に 分けへだてなく

共に また ぼくときみに

触れてくれればいいんだ

 

細長い三角形に区切られた部屋

いつもなら 移り住む ぼくときみ

今は軒先に出してもらって ビニールプール

浮かぶおもちゃ ゴムホースのシャワー

ぬるい風 貼りつく陽射し 横切る猫に 郵便配達 赤バイク

欠かしちゃならない 水鉄砲

スズメバチには でもかなわない

そして 息のかぎり 潜るように

笑顔の最中は 外にいられる

まんまるの中で ぼくときみ 細長い三角形の

時間の外に

 

通り掛かりのベビーカーから

ちっちゃい子が じっと見つめてく

理由の分からないものが苦手だから

なに? って聴けず 目をそらす

答えのないことを 知ってたんだ

けど ぼくときみ

忘れてる落とし物が ないんだろうか

 

水飛沫をかけあうように

こころを通るものを 手わたすんだ

 

夏の朝は懐かしい煙の匂いがする

草の 葉の 透明カプセル

白い大きな鳥が飛んでく 水色の空

あんなところに 白い煙

夕立があるかもしれないから

花は控えめに水を飲むかな

朝顔がまだしぼんでないんだ

白いシャツの高校生が

自転車で過ぎてく きらきらのアスファルト

こんなところに 蝉の死んだカラダ

ぼくときみ 儚いいのちなんてものが

水飛沫をかけあうように

こころを通るものを 手わたすんだ

 

どこまでも続くものが

目のまえに あらわれて

手にふれて

その重みが こころの泉を

溢れさせて

零れちゃって

瑞々しくて

ぴちゃぴちゃと

それで また遊べる

ビニールプール ぼくときみ

大人になっても そこに

いて