白いスニーカー

うっとりねむるような海の中に

繋がれて 少し揺れてる赤茶けた船体

七色の星が流れる観覧車に 星が隠れて

シーサイドホテルの曲線に 雲がほぐれる

つぶさに明かりが洩れている

 

堤防に並ぶ人影の明るい目

思い思いに声が上がる

僕は見る

いつも

空はどっかで曇ってるけど

いくつもの弾力ある笑顔に

今夜は雨でなく

光のつぶてが転がっている

 

歩道橋を下りると

僕の白いスニーカーは

僕が君を見ている隙に

君の笑顔を見上げようとして

誰かにぶつかってばかり

 

湾岸線の高架の足元、辿り着いた小さな橋から

低い何かの工場の屋根の上 見え隠れする

海花火を終わるまで

話さず僕らは立ったまま見た

丸くない花火は あっちの方ではどうなんだろう

僕は君が何を見、聴いているのか

それだけを考えていた

 

さようならがよく似合う花火に

夕日や電車のホームや

君と出会った頃を思ってみる

そういうことを止めようと思った

 

一緒に笑ってみたら

君がじっと僕の顔を見、微笑みかけてくれた

何かをやがて捨てられる気がした

 

歓声と拍手がまばらに鳴り止む

白いスニーカーは振り向くと

パノラマの街へ散らばってゆく

たくさんの背中へ 少しだけ高く

ただ一歩を踏み出した

 

追ってくる煙の匂いを

すれ違う風が薄めていく

君の笑顔を 君の微笑みを

横目に見ながら 振り返りながら