ぬくもり

 

買いたてのCDと

読みかけの本を

今夜のうちに終えてしまおう

 

バラ色の日々でも

いちばん格好悪い

君を見せられる僕になるために

 

雷鳴に似た風と

遠くのサイレンのドップラー効果の中で

ゆっくりドアを開けてゆくんだ

 

向かいの家のよく吠える犬の

寝顔が見える

毛布一枚で寒くないのかい

 

電線の向こう側で細切れになった

小さな夜空には

白い毛布があんなにあるのに

 

 

できたてのコーヒーと

焼きたてのパンを

途中の駅で買って食べよう

 

マラソンのゴールも

ただの通過点だけど

誰もがラストスパートするように

 

“会いたい”のに“会えない”

“限られた時間”の相乗効果のせいで

だんだん鼓動が速くなるんだ

 

始発のそりの走りだす時の

合図は夜明け

僕からのぬくもりは届いたかい

 

黒猫の宅急便でおととい送った

雪の結晶のは

白いのなんてぜんぜんないのに

 

 

飲みかけのコーヒーと

読み終えた本を

隣の席に置いて眠ろう

 

探しものはいつも

疲れて諦めたころ

ふと見つけられたりするものだけに

 

見えないはずの星と

並木のオレンジの照明効果の下で

待っている君の夢を見たんだ

 

東の空の優しい朝日の

目覚まし時計

サンタからのぬくもりが暖かい

 

扉が開くと同時に飛び降りて

プラットホームを駆け抜けて

階段を駆け降りた

ただ会いたくて会いたいだけで

白い息がいっそう白くなる

約束の並木道で赤い手を振った

君からのぬくもりは

白い帽子の雪だるまだった

「いいよ。片方はおまえにやるよ。」

今日は僕が彼女の手を暖めるから