コーヒーカップ

卒業式の帰り道

みんなと別れ

降り出した雨の中

改札口で待ち合わせ

 

ドアの大きな喫茶店

銀色のスプーンに

蜜色の笑顔を乗せて

「雨が止むまでいよう。」って言って

 

口が広くて白くて厚い

コーヒーカップを気に入って

ふたつもらってマフラーにくるんで

それぞれ家に持って帰った

 

あれからミルクをかき混ぜるたび

甘い涙を思い出してた

溶けてしまった

砂糖の数さえ忘れられずに

 

カレンダーをめくるたび

裏に絵を描き遊んでた

あの頃はあの頃で過ぎ行く季節を

感じようとしてたんだよね

 

今は何にもしなくったって

背中に触れる月日の流れを

風だと信じて泳いでいられる

 

小さな変化はいくつもあります

今じゃ家でもインスタントはたまにだけだし

砂糖の数も減ったんだ

変わらないのは何度か落として

それでも割れないコーヒーカップ

 

飛行機、時間通りに着いたかなぁ

あの日とよく似た雨になったよ

 

「あの喫茶店まだあったよ

相変わらず大きなドアで。」

「コーヒーカップもあのままで?」

 

ドアの大きな喫茶店

銀色のスプーンに

蜜色の笑顔を乗せて

「雨が止むまでいよう。」って言って

 

口が広くて白くて厚い

コーヒーカップを気に入って

ふたつもらってマフラーにくるんで

それぞれ家に持って帰った

 

ふたつそろったコーヒーカップ

「汚れたひとつは交換をして

真っ白なのもコーヒー色に染めようね。」

変わってくのは何度か落として

それでも割れないコーヒーカップ

変わらないのは何度か落として

それでも割れないコーヒーカップ

ふたつそろったコーヒーカップ