初恋

小さく折りたたまれた

君からの手紙には

小さな伝言が

君の字で書いてある

 

廊下の窓から見下ろすと

滲んだ傘の向こう側

傘を忘れた僕を待つ

君の姿がはっきり見えた

 

たくさんの思い出の始まりは

どれも待ちぼうけの横顔

寂しげなその顔思い出すたび

後悔は募るけど

寝坊はするし

降水確率100%で傘を忘れる

 

階段を駆け降りる

ぼくにはみえる

あの横顔も

その後に見せる笑顔も

しょうがないなっていうあきらめ顔も

 

僕の右肩の代わりに

君の右肩へと雨が降る

小さな傘の下には

せかいいちおおきな優しさがある

 

 

君が引っ越す今日

見送れないから

あの雨にも滲まなかった

☂️のマークに

せかいいちおおきな涙を降らすよ

 

廊下の窓から見下ろすと

滲んだ傘の向こう側

傘を失くした僕を待つ

君の姿も滲んで消えた