勇気

開けてはいけない扉を

見つけてしまったのでしょうか

 

開けてはいけない扉など

そもそもあるのでしょうか

 

何故に僕は

この目の前に立ちはだかり

そしてわざわざ

弱気になっている

歩みをさまたげる

この図々しくも厚い扉の

鍵を持たない!

 

取っ手はおろか鍵穴のほかには

この手につかみ 足をかけ

のぼるためのとっかかりさえ

ただのひとつもない

のっぺりとした冷たそうな大きな扉

 

嗚呼 しかしけれど

この向こうから声がする

それは夢より大事な物か

いやや 戯れた天使の笑みか

思い過ごしの幻聴なのか

 

引き返し鍵を探すか

それほど時間はあるのか知らない

陽はもう地を越え見当たらず

灰色の雲が星も月も隠して流れる

 

此処で力果てるのか 涙は枯れても欲望は尽きぬ

待ちくたびれるのは もう飽きた…

 

手を当てさえすれば 風のようにたやすく開く扉で

僕はしばし 足止めされていたんだな

 

今振り返れば そう思う