瓦礫の椅子

頬を染めた雲は

みんながみんな

夕日に向かって

瓦礫の椅子には

学校帰りの君が

膝に頬杖をついて

土手に背を向けて

ぽかっと座っている

 

瓦礫の椅子は

ひとつの大きな四角い石で

あの木の裏から

僕がひとりで持って来た

 

あの日は君に好きと言った日

土手にはムカデみたいな虫がいて

君のためにと僕が見つけたひとりがけ

 

家が近所でいいことは

会える時間が長いこと

夕日がきれいと電話をすれば

こうして二人で見れること

 

電信柱の外灯の下

ぺちゃんこのタイヤで

太ったなって言ってやったら

君の手がくすぐるから

濃い青の中

こけそうになる二人乗り

ペダルもきこきこ笑ってる

 

世界でも最大級の宝石は

瓦礫の間に挟まってたから

瓦礫の椅子って言うらしい

本気で信じた君の背もたれになら

いつまでだってなるつもりだよ

君の背中を背もたれにして

 

ゆるいカーブの川沿いの道

遠くの高架を電車が横切る

君の温かい頬が背中に触れて

振り返ったら眠そうな目で

んって言って首をかしげた

なんだか夜空に行けそな気がして

ペダルを強く踏み込んだ