花びら模様の振り子時計

川原に咲いた小さな花は

双葉の頃には もうすでに

音楽だけに生きていて

いつかは自分の散ってくのさえ

もう十分に知ってもいたのに

風の便りに聴くまでは

さらさらがきらきらなのを

想像すらもしませんでした

 

オープンカフェの振り子時計は

動き始めて 今でもずっと

風景だけに見とれてて

いつかは時が止まることさえ

もう十分に知ってもいたのに

風の便りを見かけるまでは

きらきらがさらさらなのを

想像すらもしませんでした

 

小さな小さな花びらは

一枚一枚アンテナですから

六つや七つの音楽を

それは一度に聴いたりします

 

細い細い針三本は

一本一本絵筆ですから

一秒ごとに違う景色を

それは一度に見てたりします

 

風の便りが本当ならば

世界を半分損していると

夕日の落ちたぽちゃんを聴くたび

花は哀しい気持ちになります

 

風の便りが嘘じゃないなら

世界を半分損していると

夕日の真っ赤なゆらりを見るたびに

時計は哀しい気持ちになります

 

花はオープンカフェの振り子時計に

姿も知らず恋しています

こころの声を聴けるのですから

 

振り子時計は川原の花に

声さえ知らず恋しています

こころの姿を見れるのですから

 

ぼんぼんぼんぼん

ぼんぼんぼん

花の命は短いのです

時計が時を知らせています

 

ちらちらちらちら

ちらちらちら

時計の針は逆さまです

花びら天へと散って行きます

 

しゅわしゅわしゅわしゅわ

しゅわしゅわしゅわ

満月の夜

夜風が最後の花びらさらって

音符で書いた手紙を一通

鞄に入れてさよなら告げます

 

「あなたの花びら朝日が出たら

オープンカフェの振り子時計に

残らず全部届けますから。

それはそれはもう、朝一番で。」

 

きわきわきわきわ

きわきわきわ

満月の夜

針は並んで夜空指差し

星の絵の具で手紙を一通

天の川へと流してみました

「あなたの花びらアンテナならば

オープンカフェの振り子時計に

どうぞ一枚くださりませんか。

それはそれはもう、いつでもよいから。」

 

川原に咲いた小さな花は

頭がもたげて落ちる間際に

光る一筋何かを見ました

そして ああ

川のきらきらかもしれないと

そうして瞳を閉じました

 

川原に咲いた小さな花は

頭をもたげて落ちていました

風がひゅるひゅる泣いています

そして ああ

文字盤にはいつのまに

六つや七つの

花びら模様がついていました