唇をよそに

君をまるごと食べてしまってはいけない

こころごとがじがじと齧ってはいけない

栗鼠が木の実を齧り終えたみたいに

頬張った上にきょとんとしてはなおさらいけない

万が一、望まれても

 

君の想いが僕のキスした

額の向こうにあったか

胸のアイダにあったか

または他か知らないが

 

僕が逆立ちするととっても悪い奴になっちゃうぞ

みたいなことを僕が度々言うから君はもう呆れ顔

君は君並に泣き虫だから僕はしばらく抱き寄せる

くらいだから僕のことを冷たい奴と思ったみたい

 

 

とても黙ってみると分かってしまうんだ

唇をよそに想いもなにもないことも

もぐもぐとやって君がだんだんとろけたら

想いをよそに唇もなにもないことも

 

 

君をまるごと食べてしまってはいけない

こころごとがじがじと齧ってはいけない

毛虫が木の葉を齧り終えたみたいに

繭をかけるくらいは根も葉もなくしてはいけない

万が一、拒まれても

 

君の想いはとろけ終わり

額の向こうであったか

胸のアイダであったか

結ばれ僕をあたためる

 

夜に身を折って這い出した蝶が朝君の睫に止まる

ささいなことを僕は黙ってるから君は気づかない

君は朝早く目覚めるけど僕は昼過ぎまで眠ってる

半分だけ齧る僕のことを冷たい奴と思ってるかい

 

君の想いは羽根を広げて

額の向こうをぱたぱた

胸のアイダをぱたぱた

琥珀色の息蒔いて飛ぶ

 

木の花は君の匂いで溢れてる

木の花は木の実は落とす

 

僕は君を齧ってはいけない

想いをよそに

唇をよそに