止まない雨

鍵を回したあたりで

強く降り出した

雨の落ちた金属音を

聴きながら

また誰か

両手で引っ張るから

テレビを点けたままで

うとうとしていた

 

なんでもない毎日が

劇的に変わるなら

遺跡を歩く骸骨だって

幸せだって言いそうだった

 

生まれた過去から始まって

生ぬるい水で満ちた体を持って

奇蹟と一度も信じられずに

明日ばかりを夢に見ていた

 

千切れそうな胸を温めようと

当てた手のひらがしびれて

目覚めた天井に

青っぽい光がスローモーションで

点滅するのを

同じリズムで

脈を打つ頭の中を

揺らさぬように

しばらく見ていた

最後に言おうとしてた言葉を

言い過ぎていた哀しい夢で

生きてる痛みに時々気づく

 

珍しく

救急車のサイレンもない

真夜中は

日付で言えば明日だった日

消した画面がしばらく明るく

流れ落ちた冷蔵庫の

琥珀の冷気が

かろうじて爪先に触れながら

雨の落ちる微かな音を連れてくる

薄暗い階段を上り

廊下を渡り

いつもの場所で

眠るまで

止まない雨の微かな声を

連れてくる