こころの「アリとキリギリス」

風の尾っぽに掴まって

原っぱを駆け回るキリギリス

黄緑の髭をピンと伸ばして

透明に羽根をきらめかせ

「えっへん」なんて言いそうな

得意満面の笑顔で過ぎ去る

目の前にあるものだけ見るその目が今も

きつくこころに焼きついている

 

土の煙にびくともせずに

ひたすら歩くひとすじのアリ

短い足をちょこまか動かし

「こんちわ」なんて挨拶しそうな

人の好い笑顔で過ぎ行く

じりじり陽に照らされながらこめかみを流れた汗が

眩しくこころに光をくれる

 

童話の「アリとキリギリス」

アリはまじめでやさしいね

きっとキリギリスもこれで懲りたね

子供のぼくはそう決めていた

生き方なんて決められない

こころの「アリとキリギリス」

大人の僕はどう思うだろう

 

地道をゆっくり歩くのも

軽々羽根で飛んで行くのも

大変立派な生き方だろう

 

仲良く夕げの食卓囲む

こころのアリとキリギリス

涙の数も同じなら

笑顔の数も同じだろう

 

自分のこころを信じたら

僕もいつしか食卓囲んで