てのひらの傘

半袖の腕へと

雨が降る

駅に向かう

靴の先へと

雨が降る

 

売店の安物の

傘が好きだ

雨が降るなんて

思ってもみなかったと

自慢もできた

 

また透明で

こんな季節は

緑が見れる

灰色だけど

空まで透けた

 

薄っぺらくて

軽すぎるけど

半分くらいは

守ってくれた

 

手持ちぶさただった

てのひらへと

雨が降る

 

髪も鞄も

びしょ濡れの

傘を盗られた

帰り道

優しい雨は

この季節でも

まだまだ冷たく

雨に濡れても

このてのひらは

頬に当てると

温かい