ジャングルジムに登ればよかった

イブがキスした唇が乾いてかさかさになりました

アダムだって思春期から様々な欲望の渦巻きだから

あの日ジャングルジムに登ればよかった

星がきれいだったのに 淋しさも無く

 

イブが見向きもしないほど正直者になりました

アダムだって一人なんかより欲しがってほしいんだから

あの日ジャングルジムに登ればよかった

やっかんでばかりなんだ やたら他人に笑顔で

 

今やてっぺんの溶接の火花も見えない

セイタカジャングルジムはダイヤモンドの構造で組まれてく

現実のいない空へ伸びて何を支えるんだろう

もう立ち入り禁止の高速エレベーター

 

イブに初めて触れたのは確かアダムの指達でした

アダムだって何もかも忘れたくて意味なく光を欲しがりたい

あの日ジャングルジムに登ればよかった

イブは登ってったのに アダムがいなくても

 

イブが見つけ出せないほどていたらくになったよ

アダムは何かに負け続け精神安定所を目指す自分を認められない

あの日ジャングルジムに登ればよかった

優劣がつくんだ 基準がなくても

 

今や基礎の手抜き工事もばれてるのに

マスジャングルジムは遺伝子の構造で現実へ漏れながら増殖中

でもどうやらアダム 見上げるしか能がないらしい

屋外非常階段の扉 錆びた鎖におりた黄金色の錠前に気づかない

 

今日より明日の神様を信じるわけをイブのせいにして

それでも代わりを求めてる

哀しいときのぬくもり 柔らかくも溶けないを欲してる

嬉しいときの二分の一をあげられる 感謝すべき存在

いつもそばにいてくれる今日の神様 そうイブを

 

降り止まない雨にも制限時間がある普通の人生

天使にまでストレスなんて羽根がついてつきまとわれる

楽園には水たまり 気ままな妖精の波紋に容赦ない太陽

それでも明日を信じる根拠は今日じゃないから どうせ同じでも

 

そんなこんな アダムのこころに入り切るわけがありませんと アダム空を見上げる

他人の目なんかはたかが望遠鏡 全ては分からないと 空を見上げる

それから決まって絶望するんだ アダムにも見えないアダムだと 夜毎空を見上げる

暗黒物質もなにもない宇宙だ こころはちっぽけだと 空を見上げる

 

「そうすればやがてきざす光の柱があると言われたから。」

「やがて見えたよ、でもよく見れば一本の鉄の棒だった。」

 

あの日ジャングルジムに登ればよかった

せめて転がり落ちる感覚 知りたかった

救いの白い手の幻だけでも 見たかった

 

あの日ジャングルジムに登ればよかった

すべての感覚器が閉じてる感覚の夜

せめて掻き毟る手の爪に 染みる雨音をください

 

あの日ジャングルジムに登ればよかった

イブか今日の神様を返して 今すぐ

情けない 名さえない こんな最低な気分

 

ひた走るというイメージだけが繰り返されてる

アダムの願いは アダムの願いは どこへ どこへも

出せないじゃない 明日も空も ただ闇じゃない

 

イブがキスした唇も錆びて自然に切れました

がらり落ちた鎖に月明かりで輝く黄金色踏んで

ひとつの影が音もなく登る非常階段

それが決して どこにも繋がっていなくても

ある覚悟だけ持って命の目は輝く

ジャングルジムに登ればよかった

生きることを生きるという意志を持って生きることは

明日を信じられない自分を抱くということです

それでも明日に 予定ではなく 目的なんかがある日々です

 

未練がましい アダムのイブは

欲か目的か 欲でもいいだろう目的にすれば

命が 続けば