僕がなんでできているかを

眼差しがどこまで届くか

こころに漂う水平線を追い駆けて

裸足で一歩踏み出してみる

 

泡の絡まる波打ち際

砂色の海と肌色に透けても

消えはしない痛みの走る僕の足

 

誰もいない冬は

この場所が大きなベンチ

冷たい海は風か雨

温い涙に夕街景色

滲んで波さえ囁きにする

 

僕がなんでできているかを

ばらばらに粒に砕けたり

無限にひとつとまるまったり

そうして僕でなくなっている

かたくなに曖昧なまま

自分らしさに夢が混ざって

探し始めて求め続けて

それでも僕でなくなっている

 

誰もいない明日に

立ち止まるのが大きなベンチ

拾ったソーダ色はまるい優しさ

夕暮れ時はかわりばんこで

誰かのための発光体が灯る頃

 

薄っぺらなかけらを放る

どこまで届くか確かめるためかな

今の自分の眼差しが

 

落とした靴を片方くわえて

なにを頼りに近づく足音

僕などまるでいないよに

紐を繋げば走り出すのに

 

逆さまに湾岸線の光のアーチ

向こうの方でも真っ直ぐ立てない

笑顔の口元揺れている

 

僕がなんでできているかも

そのさりげない温もりなんかも

遠くで見れば散歩している

ただの犬とのシルエット

その安心感に少し連れられ

もう冬の星座を雲間に見ながら

息が白いと少し思った