神様の背中

朝早くきつく目を閉じた真白な兎を

寝てるんだと嘘をついて抱え上げられなかったとき

差し込んで肩にあたった朝日のぬくもりの向こう

神様の背中へと逃げ道のように駆け込んだ

 

あなたの背に負ぶってもらうと

流れ去る光の中は眩し過ぎて

結局何も見えなかったのだけど

知らないうちに泣き止んでいた

 

痛かったら泣けばいい

寂しかったら呼べばいい

そんな毎日はもう終わってしまったのだと思っていたのに

神様は手を振る代わりに

僕達に出逢いと別れを隠すように置いて行った

 

願い事をする度にまるで決意表明みたいに

これからのがんばりを見ていてと言うのです

小さな勇気で大きな夢を叶えたいと無謀に転がり

小さな喜びへも大きな積み重ねで進むんだと

 

切なさの他で傷つけないと自信を持ったときから

胸に掛かるとげのある記憶も手を引いてくれて

目で伝わるものを信じ返せて思い直せて

何回も告白して何回も振られて

何回も諦めて一度だけ泣いて思った

また逃げ道を探してちゃいけないと

 

神様の背中には翼がないんだ

きっと悲しい人を負ぶるためだよ

僕の背中にも翼がないんだ

飛べないけど本当に好きな君なら背負える

いつでも

目を見ることもできないときでも

 

お互いの孤独にはいろいろなものがはめ込まれていて

モザイクになって複雑に見せるけど

日にかざせばすべてが混ざって真白い光に変わるんだ

 

朝早くきつく目を閉じた真白な兎を

寝てるんだと嘘をつかずに抱え上げたとき

まだ温かいからだの柔らかさに泣いた

 

もう僕に神様はいない

繰り返しても出逢いと別れは

与えられたものじゃないから

大切な痛みや守りたいぬくもりを教えてくれる

自分で見つけたものだから

誤魔化しながら通り過ぎることはできないけれど

 

神様の背中を追っかけて転んだ人影

君は大人になったんだ

これからは出逢いと別れをたくさん刻んで

傷なんか包み隠せないひとひらのこころを大事な人と

朝日にかざして生きて行くんだ

 

君が恐れていたいつかからいつかまで

それはそう限られた時間だけれど

僕達にはまだ始まったばかりじゃないか

嘘だと思うならほら思い出してごらん

あの日の神様の背中を

そして今は隣りにいる僕の背中を