青い花びら

今日は何かを待っている

今、空を見上げたら

今、流れ星が流れて

今、夜空が一枚の布じゃないことを

今、証明されそうだ

 

高台にある無人駅のベンチ

寝転がり星を見れば

なんだか夜空は一枚の布で

星に見えるどの穴を通り抜けたって

白いっぱいの世界があるような

ずっと気がして飽きもしない

そんなだった

昨日までとは違うよう

 

立ち上がって深呼吸して

枕木を数えながら

黄色い線の凸凹の上を歩いた

向かい風に乗った 青い花びらが

視界の端を飛んだ

 

プラットホームの隅には

金属の階段がついていて

越えた低い柵を右手で掴んで

斜めに立って

光でできた街を覗いた

その時僕は

またしばし見る

夜風に反応し輝く 青い花びら

 

どこかに青い花が咲いてるんだ

膝を折り話し掛けた

寂しいだろうし哀しいんだろう

それからし慣れた微笑みをした

 

青い花びらはまた飛んだ

ひとことしゃべればひとひらひらりと

空よりはむしろ来た道の方へ

口から漏れてる

手のひらに掬うと

手のひらを溢れる

花びらまるで千隻の舟

そっとその臙脂色の煙で出来た

明かり漏れる扉を開けて

ひとりずつ乗りこんで

無数の驚いた顔が

ひとつずつ連れてかれる

無数の方へ

それでもやがて来た方へ

 

分かってるくせに

驚いた顔は驚きながら情けない顔

情けない顔は情けなくても驚いた振り

千隻の舟は手を振らんばかりの僕で満席

 

濃紺の海ごと顔を洗ってやれば

千切れて散らばり温かった

舟は沈んで煙は口へ

耳に近づく幻電車

逃げて来たのに

帰りたい

 

浮かんだ頭を涙の雫が冷まして巡る

胸を締める思い出はまるで夜風に運ばれない

壊れたゼリー、噛み砕いた氷、窓明かり

その中にいるのは誰の想いだろう

 

ああ光でできた街は夜景だった

見たことがある

とてもよく知る人のくれた景色だ

僕が知ってるんじゃない

僕をよくよく知ってる人の

遠い昔にくれた景色だ

 

星空を横切る人工衛星みたいな

テールランプ

行き先があるんだろうそのスピード

消えても残る

 

ああ青い花びらは

ただの白い息か

 

金属の階段の冷たさは

少しだけ僕で温まってた

僕の居場所はここにない

決心って最後は直感だ

低い柵にこめかみでもたれ

夜空を見上げた

星空だった

 

行ったり来たりが人生か

ひとり苦笑い

二対のレールを

ゆっくりまたいだ

 

朝靄抜け出す始発なら

待つのも案外積極的か

 

白い息が

視界の端を飛んでいた

寒くて死ぬことあるだろう

 

白い息が

視界の端を飛んでいた

寒さのもとに咲いた花さえ

 

帰って日へと翳してやろう

どこかに咲いてる青い花

 

自分を語るのにさえ

全く言葉は足りなくて

僕は二十歳になって

初めて 家出したんだ

 

これはその時の赤裸々な告白さ