風邪をひいたからと言って
ぼくが林檎をふたつ買って行ったときは
きみが嫌いだって知らなかったよ
かぶりついたんだ
ひとりでふたつとも
ついでにって買ってった
冷えたヨーグルトをきみは食べて
ごめんねなんて言わなくていいのに
ぼくの前で眠りについた
新聞受けから
鍵を落として
ぼくは林檎でお腹いっぱいで
月のいない夜空の雲行きを
追って歩いた
人気のない明るい商店街を抜けながら
今夜ばかりは
きみを好きなわけなど考えていないぼく
370円の切符を買って
ホームのごみ箱に
コンビニのレシートを捨てた
時刻表を見て
端まで歩いた
電車の中では
酔っ払って寝ている人を避けて
きみの代わりに夜景を見たくて
でも目を閉じていた
恋人としてのモーションを
毛嫌いしてしまうぼくの
ほんとうが流れて帰って行く
今夜はきみとのキスの感触を
夢で見る