猫じゃらし

陽があたって

きらきらとそよいだ風ってのを

見たんだ

猫じゃらし一面の

広っぱだったから

 

真っ裸のきみが

その真ん中に立ってて

ぼくはなぜか

空の角を両手に持って

舞い降りてるようだった

 

ぼくの背中からは

黒い光が差す

きみの顔も体もとうとう見えない

ぼくのあげたピアスだけが

シルエットの左耳に

影で揺れてる

 

ぼくが降り立つと

風をはらんだ空はまるで大波か

滑り台のようになってはためいていて

いったい何匹の猫が駆け下りて来たんだろう

 

舞い上がった猫じゃらしが

暗黒に立ち上るぼやけた煙のようになったとき

それを追いかけて猫がジャンプした形のまま

浮かび始めた

一斉に

 

きみの笑い声が聴こえて

ぼくも吹き出して笑った

 

ぼくはさて

いつ頃目が覚めるんだろう

そう思って

きみにかぶさった

 

 

この広っぱもまた

住宅地になる

きみは少し

嘆いてるようだった

ぼくはそれよりきみを

想ったんだった