cup

注ぎ込んだジュースが

勢い余って跳ねたり

頬に飛んだしずくや あの匂い

僕の触覚に届いた

あれもこれもが零れてて

僕をびしょびしょにさせてる

 

透けたガラスのようなものの向こうに

歪んだ君の大きな目が流れる

その壁は分厚くて 冷たい

重みが手にかかる

けれど 夜にだけは思い出せたはず

そう あれもこれもがふいになり

僕はからからになっていく

 

何度も口をあてたあのフチの

砕けた光はなんだったんだろう

君も口をあてていたはず

 

どことなく削ってできた植物の模様みたいな

あの尖って柔らかい手触りはどこだったんだろう

力なく笑う 君はどこかで笑ってるかな

 

僕にだけ見えていた

君が見せようと見せていた

あるはずのものに 注ぎ込んだものは

僕をびしょびしょにさせてる

今は 大きなシミになってる

 

空いた手で作った銃を

こめかみにあててみる

目を閉じると 君が振り向いて笑う

冷たい石の地面に

カップが砕ける 木っ端微塵

バラの朝露なんて見たことがないけど

きっと こんなふうだろう

 

あったんだ と目を開ける

あれもこれもが溢れてて

僕をびしょびしょにさせてた

 

昼寝から目が覚めると僕は

冷たいジュースを飲み乾すんだ

というふうに

夏が終わっても 時には

散りばめられてて

頭の痛みは チクリ チクリ と

余計 大きくても

昨日と今日と明日が

キラリ キラリ と

結晶しても