水色に指をそわせると
きみと見た桜がほのか
ぼくに舞って来る

(もうそんな季節)と日毎に繰り返す
雨や風や雪と太陽や雲や
いつのまにだか
マネキンの春の装いなんかがぼくに
思わせていたんだな

手袋付きの散歩から戻ると
久し振りな平日の休日
天気の不安定な時期 体に気をつけて
を最後の決まり文句に
少し気が早いと思われても、と
それくらいしか見当たらなくて
桜の絵葉書にボールペンで言葉を綴った

忙しさに感けてが書き出しの手紙を読み返しながら
そんな自分も悪くないと思い通している普段の自分を
少し振り返ったりする
手紙をありがとう。
そんな気持ちをありがとう。
きっとそれだけはずっと伝えたくって

四通の葉書をポストの前でもう一度読み返して歩き出すと
坂道を降りて来る今日最終の赤い収集車とすれ違う
なぜだか振り返らないと決めてぐんぐんと歩いた
夕方がまだ明るくて水色に指をそわせると