「空と花」第二回展示会

夜間飛行

この手の先の温もりを

その冷たさの中へ

このこころの明るさを

その底の暗さまで

森の足跡に 雨雲から届く

雨のように 貫いた光のように

 

時間に立ち尽くして

季節を待ちたくない 僕は

歩き回って ふたたび

季節に立ち寄る

 

もっときれいになった君に

待ち合わせもなく 会いに

立ち寄る

 

会うまでの月日のように

遠い距離を 二度と知らないよ

 

この気持ち忘れてなかった…けど

この気持ちも忘れてしまうだろう

 

それでも

 

 

 

 夜

店長さんが私を見つめる

心配そうな顔

売れ残っちゃってかわいそうって顔

 

かなしくなんか ないよ

誰かが きっと選んでくれる

だから

 

さみしくなんか ないよ

あなたが そばにいてくれる

だから

 

くやしくなんか ないよ

私は 力いっぱい咲いてる

だから

 

せつなくなんか ないよ

明日は もっときれいになる

だから

 

泣いてなんか ないよ

月が眩しいから 涙が出る

それだけ

 

 

 

 

 

 

晴れていた

見掛けたら空を見上げていて

僕は隣でおんなじようにしたいなって思った

他の誰かと見上げている君を少し想像して

君を好きだと知った日はだから晴れていた

 

そんなの憶えていないと言った日も

晴れていた

つい昨日のことだから憶えているのだけれど

一週間ぶりに聴いた君の声は少し嗄れていて

それでいて誰のものでもなく君の声だった

 

僕が見ている青が君には赤に見えていて

夕日より青空が切ないって君も僕と同じで

僕の赤(君の青)が切ないのかもしれない

おんなじがいいってわけはなくても

せめて似ていたいと思って 一人どうし

 

そういえばどこか

君と僕が混ざっておんなじ色にならないか

なんて思っているところがあるかもしれない

それより問題は、それを

君が気に入るかどうかを

気にしている僕なんだろう

そしてこれが、

大きな問題なのか小さな問題なのか

分からないってこの気持ちなんだろう

いつのまにか君が遠くなってしまう

気がつくと僕はやっぱり

僕のことばかりを考えている

 

青空にはなんにもないから切ないのかな

そういえばまだ

二人で見上げたことはなかったね

夕日だって見たことはなかったね

空との間に鳥が飛んだり、街があったりする

どこかで

ときどき隣りにいたり、

食べながら話したり、

ばかに笑っているのに

いつもそんなことは、いつのまにか過ぎて、

忘れているね

それとも君はやっぱり一人で見ていたのかな

僕の気づかないどこかで

 

 

 

いろんな日が晴れていたのとおんなじくらい

雨だった日のことも憶えているかい

あんまりの土砂降りに君が

僕を部屋に呼んだ電話を

あの冬の耳の受話器に当たる感触を

僕は憶えているけれど

僕は僕の目では僕を見れないと

君をしっかり見ようと思った

守りたいとは、どこか

言いにくい雰囲気のある君だけれど

 

でも結局、

君を想像するしか僕は君を知れない

僕を君に伝えたいけれど

言葉にはとてもできそうにない

できるのは限りをつけず

ただそばにいるってことなのかもしれないと

僕は君のもうひとつの青空になろうと決めた

唯一を諦めても

限りない想像力をいつか持てたならいい

 

君のそばにいる僕はいつも切なく晴れていた

それだけはいつか

おんなじように

僕にも君にも分かりますように

君と僕で並んで見上げたり見たりして

いつもときどき

なにもないところにあるかもしれないものを

だけではなくて

なにもかもあるところに

ないかもしれないものを見つけるようにも

探しに出掛けよう

 

僕の僕を 僕の君を 僕の僕と君を

僕の僕と君以外の まだ大切なものも

君の君を 君の僕を 君の君と僕を

君の君と僕以外の まだ大事なものも

探しに 出掛けよう

 

 

 

花を贈ります

君に花を贈ります

白く小さな鉢植えで

淡いピンクのリボンをかけて

うす紫の可愛い花

 

君はいつも悲しい顔してたね

その瞳はどこか遠くを見つめてて

それでも明るくしてくれた

 

いつも君のそばにいたはずなのに

君は一人ぼっちだったんだね

同じ色の下にいたはずなのに

なんにも知らなかった

 

君に花を贈ります

何の記念日でもない日で

メッセージも付けないで

言葉もなく手渡す花

 

君はいつも疲れた顔してたね

その瞳はどこか遠くを探してて

それでも優しくしてくれた

 

いつも君のそばにいたはずなのに

君は一人ぼっちだったんだね

見上げた色も同じはずなのに

なんにもできなかった

 

・・・花になりたい

 

いつも君のそばで

綺麗な花を咲かせて

君を笑顔に導いてあげたい

いつも君のそばで

緑をたくさん広げて

君を安心させてあげたい

いつも君のそばで

ゆっくりと成長して

君の空気を作ってあげたい

 

花になりたい

花になりたい

花に・・・

 

どんなに願っても

どんなに祈っても

花には なれなくて

人でしか なくて

 

だから

 

君に花を贈ります

つぼみも開こうとしていて

緑もたくさん増えそうで

君と同じ色を見上げてる

うす紫の可愛い花を