「空と花」第五回展示会

窓ガラス越し

雲ひとつない

青い空を見上げながら

なにに縛られ

僕は飛び出さなかったのだろう

 

大人になって

僕は初めて

自分ひとりで誰にも言わず

それは短い

それは空と

ゆう題名の詩を書いた

 

なまえも知らない

顔も知らない

それはでも初めから君だった

たそがれのように

せつない時間

それはでも

傷口に染みる薬のように

時間をかけて 時間をかけて

僕を助けてくれていて

たそがれに夕空を飛んで行く鳥

見続けていて気付いたこと

それを君には

いつまででも

伝えたいと思う今がある

 

僕のうたう下手くそなうたで

どうして君は泣いたのだろう

 

僕のうたう下手くそなうたで

どうして君と会えたのだろう

 

思い上がりに気が付くまでに

どれくらい淋しかっただろう

 

それはいつでも君がいつでも

耳を澄ませていてくれたから

 

それはいつでも君がいつでも

隣でうたってくれていたから

 

いつまでもだからいつまでも

うたうよ空を

青い空を

 

 

 

向日葵

青さがやわらぎ

あわい雲が広がった

穏やかな空の下

色とりどりの秋桜が

仲間と手を繋いでる

 

細い路地を挟んだ

その向こう側で

少し冷たくなった風に

花びらと

葉を震わせながら

君は一人で咲いている
春にまいた種たちは

暖かい光を

全身で受けながら

ぐんぐん育って大きくなって

長い梅雨が明けるのを

待っていたかのように

一斉に

鮮やかな花をつけた

でも君だけは

背が低くて小さくて

花をつけるどころか

つぼみさえも

つけていなかった

なのに

 

みんなが君を忘れかけていた

そのとき君は顔を上げた

 

傾きかけた太陽を探すように

君はゆっくり顔を上げた

 

こんなに背が伸びていたこと

誰も気づいていなかった

 

路地を通り過ぎる子供たちは

季節はずれと笑ったけど

 

そんなこと気にもしない君は

誇らしげに顔を上げてた

 

僕は君を

ただ

見上げることしかできなかった