フレンチロースト

僕も好きな甘い

カフェオレに合うというから

君と行ったデパ地下で

フレンチローストを買って来て

サイフォンでたててる間に

買い忘れたミルクを

コンビニまで買いに行く

 

今年初めて出した

サンダルが肌足に擦れて涼しいみたい

どこまで行けるだろうなんて

痛みに変わるまでも歩かないくせに

思った

そんな自分をこの頃の毎日僕は

空に放つ

 

梅雨の晴れ間に

京都の空はなんでこんなに広いんだろう

君の言葉を思い出している

手渡す手紙に

そんな僕は書き忘れたよ

 

火にかけたミルクは

銀色の軽量カップから

幸せの泡を吹きこぼし続ける

放っておけば いつまでも

キッチンの椅子は

夢を見る場所?

 

鍋つかみをはめた手で

ミルクを注ぐとき

空のコップに気づいてやり直す

 

溶けにくい琥珀みたいな砂糖は

珈琲を注ぐ前にカップに入れておかないといけない

チリチリという音が割と好き

 

作りすぎた珈琲は

ミルクと半分半分入れるのにこのカップには入りきらない

そんな言い訳が偶然のように生まれて

胸焼けしそうな予感も割と好き

 

保温された珈琲はどこか可愛そうな気持ちになって見ていられない

冷めた珈琲を流しに流してしまうときの気持ちだってどこかやるせない

いっそ僕の胸が少し冷めた珈琲で焼けてしまう方が気楽な気がして

 

カフェオレを二杯飲むと

いつもの散歩道を辿って僕は

紫陽花を見に行ったときに撮った写真を

現像に出しに行く

 

一時間ほどかかるというから

喫茶店でジンジャエール飲んで

手渡す手紙に

こんな僕を書き綴ったよ

 

これから咲く花の色がみんな みんな

美しいことを願いながら

飲み乾しかけたジンジャエール

氷と氷の間に閉じ込められたような

さくらんぼを覗き込みながら

 

この頃きれいな色に敏感になった僕は

やがてその理由を追いかけに席を立った