セロハン

温かい水で歯を磨くと

集める車が来る前に

今頃になって少し早足で

僕は町角に歩く

 

雲が見守る夕焼けの僕の空が

僕の黒目にセロハンのように張り付くだろう

君の目にいつか見た君の空に似たように

帰り道になんとなく顔を見上げたなら

 

お元気ですか?に

元気です。と

応えたり答えなかったり

七日も過ぎて出来合いの年賀葉書をポケットから

ポストに落とす

 

その時に

溢れ出すように零れ落ちる細切れのセロハンは

尖った場所に夕日とゆう夕日を集める

僕は知らない

 

とたんにぐにゃりと溶けると

みんな小さな黒い塊になって

風にばらばらに運ばれて行く

 

緩い上り坂に踵を返すと

僕は空を見上げた

偶然の人達を何人か見た

僕を知らない

 

帰ると椅子の隣にずらした

石油ストーブの青いボタンを押す

やがて火が点くまで

僕は甘いコーヒーを入れる

 

君に三回だけのコールを鳴らすと

僕は手紙を書くつもりだった

 

別に話すことなんてないけど

とゆう君に

 

君に手紙を書くつもりだった