朝露はまだ湿った白砂の上で
夢を思い出そうとしている
何年ぶりの雨だったろう
外はもう明るい
薔薇はふうわりと言う
「それはきみがしんじゃったゆめだろう」
揺らす尻尾の先が蕾みたいだ
朝露はひとこぶ駱駝の背によじ登ると
しばらくしてから尋ねたのだった
「ぼくがいつもあめのふったひのよるに
みるゆめはなんだったろう」
薔薇は見聞きしたことは全て覚えていた
「このこぶのなかさ」
またぞろ不思議がって首を傾げる
真っ白い木の葉の陰にいる蟻に呟いた
「しんじゃったきみがいうのさ
いきているのは
あさつゆのついたばらをみているみたい
しんでいるのは
ばらのはいったあさつゆをみているみたい」
朝まだき水たまりが干上がってしまうと
二人はまたばらばらに砂漠に戻った
砂を流す風がときどき
駱駝の銜えた木の葉を揺らした