いつの間にか 知った気になって
しかめっ面の帰り道
陽射しや風まで形になって
こころに残るその前に
あの日の笑顔を取り戻せ
コンビニを出て信号無視して
ゴミ収集所の角を曲がって
見つける喜び忘れてしまって
いつもの道をいつもの速足
小学校の下校時間か
黄色い帽子とランドセル
自由気ままに道に広がり
車が来たらうまくまとまる
そう言えば道の歩き方
習ったことってあったっけ
どうしてこんなにへたくそなんだ
ぼくはいつも端っこばかりを歩いてさ
尖った口にすばやくあてた
人差し指とニコニコ笑顔
ずっと向こうの女の子
ときどきこっちを振り返る
笑顔の君はあの子に恋して
隠れて走ってかくれんぼ
ちょっとゆっくり歩き出したら
幼い恋を見つけてしまった
そう言えばこんなこと
子供のころにあったよな
どうして今まで忘れてたんだろ
とっても大事に思っていたのに
いつの間にか かくれんぼする小学生と
抜きつ抜かれつ帰り道
とうとうあの子は見つかって
あの子に向かって走ってる
たくさん揺れるランドセル
ぼくが忘れた忘れ物
たくさん たくさんぶらさげて
「男の人ってたいへんね。」
あの子がぼくに言っている
「女の人もたいへんだ。」
ぼくもあの子に言ったっけ
ぼくは道路の真ん中で
形を変えてく雲を見上げて
ゆっくり歩く
あの子とあの子が
追いかけっこして
ぼくを追い越し
家への角を
ぼくは笑顔で
右へ下った
いつの間にか 花を咲かせた
隣の隣のみっつの花壇
陽射しや風まで形になって
こころに残るようでした