この大きな木

やればなんでもできる

という木が

今やもう大きくなって

水を掛けられていた

葉っぱ達が

肩を抱き合い風に揺れ

陽射しをうまく遮ったりする

 

行き帰りの

朝と夕方には

鳥が集い

休日には

一番よく飛ぶ

紙飛行機が

ひっかかったりする

 

闇と雲の間で

塀の向こうに頭を覗かせ

もう誰の助けもいらないで

それでも黙って立ったまんまで

 

耳の奥に住みついた

あの葉の音

もし体だけ遠く離れても

それだけは連れて行く

 

大きな木を背もたれにして

蟻が這う土に座る

土のついた手を払い

蜜蜂の足について来た

ぼやけた空を見上げる

 

光よりきれいに光る

かくれんぼする影の群れ

枝や葉っぱは

風の鼓動で生きている

 

時の鼓動は

時々速すぎるんだ

さぁ うたたね

 

人に満ちている

いくらかの水で

枯れないでいる

この大きな木

 

腕を回しても

届かない

たった二枚の

手のひらで

撫でてやれば

こんな小さな

体の中に

この大きな木

 

目が覚めると

ほら

今日も誰か

木のてっぺんから

空に溶けない

真っ白な

紙飛行機を

飛ばしてる

 

やればなんでもできる

という木は

今やもう大きくなって

それでも今日も

背を伸ばし

あの大きな木

とか

この大きな木

なんて

呼ばれています