すてネコ

電信柱の下に捨てられた

ダンボールの中の仔猫を

赤いランドセルを道端において

見つめている

 

「その仔猫わたしがもらってもいいかなぁ。」

きっとあの時の僕はあんな感じだったんだろう

ひとりで家に帰るのが

淋しくてしょうがなかった

仔猫の瞳の中には小さな小さな僕がいたから

ほっとけなかった

 

仔猫はじっと見つめ返している

友達から少し遅れて僕は

電信柱を通り過ぎてく

 

もしもあの時あの女の人が

僕の代わりに仔猫を拾ってくれなかったら

ひとりぼっちのまんまで途方に暮れていただろう

僕の瞳の中には小さな小さな女の子がいるから

ほっとけなかった

 

仔猫はじっと見つめ返している

友達に囲まれながら僕は

女の子を見送っていた

 

交差点でふり返った時

ダンボール箱を抱えながら

振ってくれた手のひらを

今も 憶えている

 

 

女の子は手を振って

交差点に走って消えた

 

うれしくてうれしくてしょうがなかった

走りながらあの時僕は

なぜか涙が溢れて止まらなかった