イタズラガキ

この本を読み終えたら

もう夜が明ける頃だから

君に電話しておこう

この本を読み終えたら

もう夜が明ける頃だから

君に会いに行くからと

あくびするたび

夜更かしの言い訳は

いつもこの本だった

この本を読み終えたら

ひととおり切なさも打ち寄せて

眠れるはずと信じていたのに

この本には君が足りない

けどこのまま読み終える

まだ生まれたての匂いを挟んだ

分かりきった結末を読み終える

この本には君が足りない

代わりに空白が詰まってる

もう僕はさっきまで受話器を持ってた手に

部屋の鍵を入れて歩き出してる

君が絵本か何かと言った

この本を読み終えたら

決まって君に会いたくなる

だってこの本には

何にも書いてない

下手したら

一秒間で読み終える

絵のない絵本でもない

君のいる僕だけが持つ

詩のない詩集

タイトルは分かりやすいように

「頼りない未来」とでも

いたずらがきしておく