君は花を好きだから

半分雲が覆った空を

君なら半分晴れてると言うだろう

会えない日曜日は

会える日の分だけ全部の

雨が降ればと願う日なのに

 

君は花を好きだから

晴れた日と雨の日を

同じくらいの微笑みで迎える

雨が嫌いな僕の傘を

一人占めして走った時は

困った顔で追いかけながら

こころはなぜか笑ってた

 

橋を渡り切って

いつも通りの速足で歩く

君は花を好きだから

振り返ればいないことがある

僕はいつしかゆっくり歩き

君と立ち止まり

何かしら花のようなものを

たくさん見掛けるようになった

眉間に皺をよせて見ていたけれど

こころはいつも微笑んでいた

 

真昼のアーケードのなか

夕焼け色の蜜を塗った窓枠の向こう

銀色にくすむブリキの風車の置物を見つけた

女の子ばかりで君がいればと思ったけど

初めての小物屋へ澄まして入った

 

ブリキの風車の置物が

入ってるはずの袋には

クリーム色の縞模様の間

煉瓦の覗く植木鉢

どこかの角にぶつけないよに

ゆっくり歩く

君は花を好きだから

誤魔化してみても

僕は一人でいるのに

君のことばかり考えてる

 

なんでもない日の

なんでもないプレゼント

なんて言って渡そうか

 

君は花を好きだから

きざな言葉が嫌いだったね

君は花を好きだから

きざな言葉になるのかな

 

きっと何も言わずに

ほらって感じで渡すだろう

けど

君は花を好きだから

大喜びで笑うと思う

君は花を好きだから

きっと

なんかの花を咲かすと思う

 

流れる雲を見ていたら

なんだか時間のことを考えたけど

止まれないのは哀しいだろうね

今日は一日暇なんだからと

晴れてる方へ歩き続けた

だんだん袋が重たくなってく

君がいないと夕暮れまでが

とても長くてひどく不便だ

 

君は花を好きだから

当然のよに花屋でバイト

定休日が火曜日なのが

僕がほんとに笑えないこと

 

夕暮れが済んで

木の中の外灯が

まあるく葉を照らす角を折れて

線路を渡って花屋に到着

ほらって袋を渡したら

中身を覗いて

もう秋だからって

腕を組もうとしつこくするから

困った顔で振り払いながら

それでもゆっくり

ゆっくり歩いた