君を絵に描く

今、家に着いた

今も空が青い

でも、白い弓なりの月が出てる

夕焼けはこれから

着いたよの電話まで

時間つぶしに

顔を洗ってベランダにいる

 

海は透明だった

もうこころでは濃い青だけど

手のなかでは透明だった

 

今、電話が鳴った

今も空は青い

でも、白い弓なりの月が瞬きする

夕焼けが煙る

楽しかったねは言わない

時間つぶしに

君を絵に描く

 

ガラス越しに手を挙げて

君の乗った砂時計をひっくり返すたび

恋は新しく始まる

 

海は透明だった

でも、今も空は青い

 

近づけば、透明じゃない君の肌に

空の色をつける

海の雫

目元を思い出す

君の声を聴きながら

 

今頃、白い弓なりの月が赤く沈み始めるはず

 

近づけば、真顔になる君の肌に

月の色をつける

海の雫

口元を思い出す

君の声を聴きながら

 

受話器を先に置いて

ベランダに行く

どれか分からないから

とりあえず全部見ておく

 

近づけば、透明な君の瞳に

星じゃなく

海の雫

色のない

君の声を思い出しながら

 

君を絵に描く

透明だった君は

もう瞳と声だけ

 

たったこれだけの時間で

手のひらの海はもう青く見えるけど

本当は透明だった

 

まだ憶え切れない

瞳と声は

僕が唯一触れられたもの

 

君を絵に描く

知らないことを

切ないと思う

 

君を絵に描く

知りたいことを

切ないと思う

 

青くなくなった空に

青い海が広がる

バイパスを走る波音が

一度きりを繰り返す

 

忘れていくことで

いつまでも忘れない

今の今

 

目を閉じたまま

今日出逢ったように

でも少しだけ色づいた

君を絵に描く

 

今日は隣りで

爪を見ていた

君を絵に描く