言葉ここに在らず

こころの器に満たされた

しんとする透明な水を

かき混ぜてごらん

けちんぼは 土色

嘘つきは 群青

僕のは 無理だ

 

誰もが重い気持ちを沈め

こころの器に たっぷり水を

たたえて 素敵に生きている

そんな気持ちは宝石なので

かき混ぜたって濁りはしない

澄んだ湖の真ん中辺りが

いちばん似ている

 

今 そんなこんなに思いをはせて

僕が見るのは 夕暮れの川

ひやひやと指の間をすり抜けて

こころに満ちる水の群れ

その頃 言葉ここに在らず

 

いつもは言葉ばかりで

水はからから

夕暮れ 川に行かない時は

こころの器が空っぽで

僕は泣けない

 

こころの器に

哀しい石やまあるい愛が

ぽちゃんと落ちると そっと溢れて

涙と呼ばれる

 

いつまでも泣けないのは

涙のように美しい水を

もったいないとけちんぼなのだ

 

僕は歩くと

がらがらがらと音がする

石が何個か入っているんだ

今までついた嘘かもしれない

想い出なのかもしれないけれど

今までついた嘘だろう

 

愛する人を見つけたら

川原に行こうと決めている

土と群青かき混ぜて

愛を溶かした僕の涙が

透明なのかを

確かめたい