体温の川

自転車に跨って

僕は再度

玄関先の上り坂を

漕ぎ出した

 

嘘で固くなった唇に

体温の川が伝って

再度 花は咲くと

信じて

 

冷たかった

風はまだ

でも

死ねなかった

 

後悔しないだろう

嘘を包んでくれた家族のこころに

体を抱いてくれたもう一人の体に

あの川は渡っているのだから

 

どんな選択も

その後の努力次第だと

 

自転車に跨って

僕は再度

まだ不意に切れてしまう

濡れたばかりの固い唇を

噛み締め 漕ぎ出している

 

憧れの居る世界の青空が

どんな色やかたちでも

今は構わない と