記憶のない空色の花が
今、咲いたばかり
いつかの誕生日
吹き消したロウソクの
火のように揺れている
春の終わりの日曜日
公園のグラウンドを囲む
一本の木陰の真ん中で
パンをほおばりながら
繰り返すものたちを見ていた
枝先の葉の影が
揺れて木陰を縁取るレースみたい
初めてを探して
見慣れない道のりを歩き出す
バイバイと手を振る姿が
ぐっと目を閉じれば
おいでおいでと未来から
呼んでいるみたいにも見える
やがてまたこれからの景色が
見慣れたものに変わっても
初めてを探して
ここに辿り着いたなら
記憶のない空色の花が
今、咲いたばかり
いつかの誕生日
吹き消すロウソクの
火のように揺れている