空白

透明なリボンをほどき

重さのない包みを開けると

僕に小さな空白が届けられた

 

世界中の時計は回り続ける

電池が切れてしまっても

信じてしまいそうだったんだ早朝の

パンの焼ける甘い匂いがなかったら

 

空白が僕に言う

コーヒーは自分で淹れてちょうだい

たまにはね

そしてついでに私にも

 

片付けをしていると出て来た

懐かしい色の一瓶のインクが

懐かしい手紙のことを思い出させた

 

空白が僕に笑う

そんなことなんてなにもかも

あったのかしら

 

蝶として生まれて

花の蜜だけを糧に生きて

死ねたら幸せなのに

ひらひらと舞うように飛んで

 

そんなようなことを

君は僕に言わなかっただろうか

パンを毎朝焼くようになる前に

まだコーヒーが飲めなかった頃に