忘れてしまいたいことすべて
忘れてしまえる黄色い実がなったけれど
食べないでいたら
朽ちてしぼんで落ちてしまった
青空を旋回している白い飛行船
君から借りた本を枕に木陰で
紙袋の中から運ばれて来る
君の焼いたパンの匂いをかぐ
忘れたくないことすべて
いつまでも忘れない小鳥が来たけれど
カゴに入れないでいたら
飛べなくなるまでそばにいた
一度も「さよなら」と言わないのに
いつも言っているようなさえずりだった
君のためにまいたはずのパンくずが
僕の中にちりばめられた星屑になり
肩を抱いて暗がりにまたたく
雪融け水のような涙が頬を伝う
やがてそのほとりに咲く花を想う