ちいさな雨に
ちいさなふたをあけている
手でうけるふりをしてみせる君
しずかな箱の外には
星が落ちている、と
見上げていた僕は 目のそばに
木の葉から滑り落ちた 雨粒が跳ねる
君の手が流れると
とたん背中から
自分らしさは破り捨てられて
君のただ一個に
僕もただ一個になってしまう
8角形のガラスの箱の
あかく発光する、夜の
星降る夜の 火はあおく あおく
落下さえ 吹く
してしまっていた 唇に
しんとした音が鳴っている
君のもう片方の手で逆さになっている傘に
星が透き通ってしまう
外灯の中には誰もいない 蜘蛛の巣が張っている
傘は真っ赤でなくて 僕のだった
瞬く星の見えない瞬間 僕らは何を見ているのだろう
傘は黄昏もなく すぐに壊れた
空に行ける階段を… 砂漠にはその残骸があるのだろうか
傘はくしゃみをして 夜空に星はふたたび
夕日に向かって切なくなるのも 何かのせいにできるだろうか
ちいさな雨に
ちいさなやねをさしている
これが幸福感なのだろうか
とても大きな空が滲み揺れている
…誰も止められない
…この疾走は
…突き破れば終わりそうな何かを
…引き延ばしながら
…突き破ろうと
…突き破ろうと終わりなく
…明滅している
そして 髪が乾くと
僕らは眠ってしまうだろう
星降る夜に
目を閉じたまま