階段の途中で靴紐を結ぶ
地下鉄の5番出口を見上げる
四角い澄んだ空 枯れ葉がずるずると横切る
そこから
真っ直ぐ君のマンションの前まで
黄色い並木道はつづく
へんなプライドの守り方をしてる
片方だけ出した手や 荒れた頬
傷つけてるつもりでいる
君が脱がせた軽い靴
君が脱がせた温い服
君が脱がせる この手も この頬も
下る非常階段で星を見る
君の吐く白い息にかぶりつく
嘘を捨てた見にくい笑顔 唇ががりがりと震える
そらへと
真っ直ぐ君の部屋の窓から
零れた乳白色はつづく
存在しないもつれ合いをしてる
手を出せない幸福や 滑る君
傷もやがて声を手にとる
どこにいこうか どこでもいいよ って
どこにいこうか どこでもいいよ って
君が穿かせた重い靴
君が穿かせた寒い服
君が穿かせる 幸福も 君も
脱ぎ捨てたら でも
凍えてしまうだろう
真っ直ぐ君のマンションの前から
黄色い並木道はつづく
見えなくなると 君は窓を閉めるだろう
乳白色を そして四角く切り取って
傷ついていないつもりの 片方の手で
ポケットにねじりこんで 僕は
5番出口を降りていく