もうぼくの年とかわらない母が
ぼくの鼻を拭く
ぎゅっとつぶった目をひらくと
かわいた風景が
だんだんうるんで息を吹きかえす
同じような電車に乗って
きみにあいにゆけば
夏休み
田舎の家を思い出す
並んだ簾越しに
縁側に
太陽の光がオレンジ色の
車窓の空には
色とりどりの雲が浮き
雲が雲に
影を落としている
きみの部屋に寝転ぶとまた
きみが添い寝ばかり
風が吹くたび鼻を動かしたのは
なんの匂いを嗅いだのだろう
きみがもうそばにいたような
今が昔とつながっている
たしかな感触 きみの汗ばんだ肌の感触
ひとつだけある窓の外にも
色とりどりの雲が浮き
お次は空に影を落とすのか
ぼくは見つめる ただその遠さに