例えば夜の空なのに飛行機雲が輝いて見える
きみに見せたいと思ったり
自分に残したいと思ったり
することがひとつぼくのきみへの想いの飛ばし方
なのかもしれず
取った行動は携帯電話のカメラを掲げ
やっぱり駄目かと粒子の粗い暗闇をポケットに仕舞うこと
今夜は月夜
きみは気付いているかなあと
月はともかく飛行機は
そっちでは見えないかなあと
思いながら

少し遅くなった帰りに
空いた道路を少し飛ばして辿り着いた家の前の緩い坂道で
ほんとにふと見上げた夜空だった
向かいのよく吠える犬が一度だけ吠える
腹を立てる程は気力もなく
着替えると
あっためるのも気後れがして冷たいままのミルクを一杯
きみに電話を掛けながら

そして飛行機雲の話をするわけでもなく
月を確かめたりもしないまま
戦争の話題なんかを少しして
眠たいねと言って
寝ようかと言って
電話を切って

月が照らしてか
月に照らされてか
ともかく
白く引かれた
輝いた
一本の夜空の中の飛行機雲がどんなに綺麗だったか
きみと一緒に見られなかったのが残念だった

きみといつも一緒にいたいと思った
そんな夜だった

おやすみ