よく吠える向かいの犬も寝息を立てる
こんな静かに深まる夜は
この町の川の流れが聞こえる気がする
随分と行ってない
いつもの散歩道だった川原までの道
記憶に乗って
こっそり出掛ける
ふんばらないと
足下ばかりに目が行って
自分の影を見つめてしまうから
そんな理由で空ばかり
見て歩いてたあの頃だった
そのことが分かって初めて
宝石のように
あの時のつらさが輝き出したのを
胸の奥から広がる温もりで
気付けた今夜
思い返せば
涙の傍に寄り添っている君
泣いてる姿を見せられるのは
君だけなんだね
だんだん色をなくしていって
白くなる自分を想像する
たとえばりんごは
赤色だけを反射するから赤く見える
そして光は
絵の具と違って
すべての色を混ぜてしまうと白くなる
何も書かれていない
真っ白な一枚の紙を目の前に
途方に暮れる君の顔
容易に想像できるけど
僕がいなければ放たれたまま
突き進むだけの君の光を
少しだけ
でもどの色も
返してあげれるよう
いつかのいつかは
きらきら光る水面が見える
家族と君と
昼間、窓からあの川の見える部屋で
食事をした後
帰り道、二人で見た景色の一つだ
涙ばかりを携えてったこの川に
今日は笑顔を返せたよ
ただいま
幸せってこうゆうことかな
青空、野良猫、鉢植えの花
子供と自転車、蟻、ハンバーガー
夕焼け、夕闇、一番星
暗闇、涙、嗚咽と涙
テールランプや月夜のカーテン
そよ風、秋冬、遠くの誰か
爪先、指先、いつかの匂い
薬とジュース、昼間のお風呂
ずる休み、山のてっぺん
君の涙も
すべての記憶さえ
雨上がり、光を浴びた雫に濡れて
初めて見るものばかりみたいに見える
ただいま
おかえり
(ありがとう)