振り子時計

いつかのさびしさがつけたくせかな

ふしぎに思うくらい

きみはもうそばにいるのに

今もふとひとりになると空を見上げる

 

きみと暮らしはじめるとき

いつかの街で見つけた振り子時計を思い出し

今ではすっかりネジを巻くのも

ぼくの役目で

 

空を見上げるとき

いつかまたひとりになることを思い知り

たまらなくなる

 

文字盤に左右二個あるちいさな穴に

鍵みたいなネジ巻きをさしこんでほら

針をまわす右の方はね時計とは

逆まわりにまわすんだ

週に一度くらい すこしかたくなる 十回くらい

 

鐘を鳴らす左の方はうるさいからと

もうずいぶんと巻かないままで でも

鳴らすなら時計とおなじ時計まわりにおなじだけ

 

何度おしえてもきみは

ぼくまかせにするから

 

空を見上げるとき

よけいな心配をするんだ

 

きみへの思いも

何年ぶん 何十年ぶん

振り子時計のネジを巻くように

巻いておけたらいいのにな

 

雨ののちの夕空に

のびてゆくひこうき雲

きみがもう一足さきに

そろそろ家にかえっているころ