木漏日

リンゴにも

その影のように

ましてや

アップルパイになんて

その焼きたての

香ばしい匂いのように

本当は

僕にも君にも僕らの子にも

名前なんてない

 

その目はもっと

その手はもっと

心を持っている

 

笑顔はもっと

涙ももっと

見せて 僕へ

それは きっと

虹も越えて

手渡される手紙

ぬくもりのある

 

一人の頃の

無数の引っ掻き傷

出会いの風景の中

きらきらひかる

放つ光を乱反射して

 

二人の頃の

無数のピンホール

さようならの風景の中

ぴかぴか瞬く

百年に一度の星空になる

森の奥の木の

枯葉が斜面に降り積もる

そんな風に

思い出がやがて空を埋め尽くす

闇として

そうして初めて見えて来る

一番星です

 

哀しまないで

再びの

一人の頃を

心はもう

闇を忘れない

だから星も もう

消えることない

 

残酷なのかも

しれないけれど

 

その星にすら

名前はなく

命はそう

そんな風に輝いている

 

届くあてのない光を

ぬくもりを

それでも

放たないわけにはゆかず

ただ

生きているだけで